研究トピックス
間欠型一酸化炭素中毒の重症度分類と予後関連因子
2015/05/10
間欠型一酸化炭素中毒の重症度分類と予後関連因子
Kuroda
H, Fujihara
K, Kushimoto
S, Aoki
M.
Neurotoxicology. 2015;48:35-43. doi: 10.1016/j.neuro.2015.03.002.
一酸化炭素(carbon monoxide; CO)による間欠型中毒(delayed
neurologic sequelae; DNS)は急性中毒から一旦回復後に再発性の神経障害をきたすが,その長期予後については詳細な報告がなかった.また,DNSで髄液ミエリン塩基性蛋白(myelin basic protein; MBP)上昇を呈する例の報告はあったが,適切な測定時期やその臨床的有用性については不明であった.本研究の目的はDNSの長期予後と予後関連因子を明らかにすることと,CO中毒患者診療における髄液MBP測定の有用性を明らかにすることであった.
急性CO中毒患者について臨床症状,血液・髄液検査,頭部MRIを評価し,DNS発症者については1年後まで追跡した.DNS重症度は症状極期および1年後の自立度を基にGrade
1 (consistent independence),Grade 2 (temporary
dependence),Grade 3 (persistent dependence) の3型に分類した.
対象患者は急性CO中毒患者100名で,20名(20%)がDNSを発症した.重症度はGrade 1が6名(30%),Grade 2が10名(50%),Grade 3が4名(20%)であった.予後不良(Grade
3)と関連する因子はCO暴露時の高い年齢とDNS症状の早期出現であった.髄液MBP値は急性期および1ヶ月の時点ともにDNS群が非DNS群より有意に高く,DNS群の中でも予後不良群は良好群より1ヶ月時点での髄液MBPが高値であった.MBP
index(年齢×髄液MBP)を用いることで,予後予測確率をさらに高めることが可能であった.
以上の結果により,高齢および早期発症がDNS予後不良因子であり,髄液MBP測定はDNS発症予測,診断,予後予測のすべてに有用であることが示された.
(文責;黒田 宙)
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