研究トピックス
炎症性神経疾患におけるBBB透過性の定量評価とその重要性
2015/01/08
血液脳関門(BBB)透過性の、疾患間での定量的な差異や、病期ごとの推移、臨床的な実用性を調べるため、東北大学病院および仙台医療センターの2施設において、ウイルス性髄膜炎74名、細菌性髄膜炎12名、多発性硬化症(MS)75名、視神経脊髄炎(NMO)65名の髄液データを急性期と慢性期に分けて後方視的に集計し、髄液細胞増多のない対照群167名とともに検証した。BBB透過性の指標にはQAlb(=髄液Alb÷血中Alb)を用い、QIgGも同時に算出し、それらを用いた二次元座標(Reibergram)上に全症例をプロットすることで、各疾患がもつBBB透過性の特性を視覚的に検討できるようにした。
両施設間で対照群の分布に、有意な施設間誤差を認めなかった。対照群では、とくに50歳台以下で男性のほうが女性よりQAlb、QIgGとも高かった。Reibergram上の分布は対照群よりウイルス性髄膜炎でより右上に高く位置し、細菌性髄膜炎ではさらに高かった。対照群および髄膜炎のほとんどの症例でIgG-indexは正常で、Reibergram上の正常な分布上限線(QLim)を超えなかったが、ヘルペス性髄膜炎の3例だけは髄腔内IgG産生に伴ってQLimを超えた。いずれの髄膜炎でもBBB透過性は数週間以内に急速に低下した。髄膜炎急性期のQIgGは入院日数と中等度の相関を示し、髄液細胞数よりも重要な重症度の指標であることが示唆された。
MSでは急性期・慢性期ともQAlbは対照群と同程度であったが、QLimを超える症例が多く、それらでは髄液オリゴクローナルバンドも高率に検出された。NMOではQLimを超える症例は少なかったが、急性期にBBB透過性の亢進を認めた。MSの障害度(EDSS)とQAlbは有意な相関を示し、その時点における中枢神経系での炎症や傷害の強さをよく反映しており、最終的な障害到達度を予測する上でもQAlbは重要と考えられた。
(文責:赤石 哲也)
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