研究トピックス
家族性パーキンソン病PARK17原因遺伝子VPS35の異常はリソソームにおけるαシヌクレイン分解を妨げ、ショウジョウバエモデルにおける神経毒性を悪化させる
2014/08/16
VPS35 dysfunction impairs lysosomal
degradation of α-synuclein and
exacerbates neurotoxicity in a Drosophila model of Parkinson’s disease
Emiko Miura, Takafumi Hasegawa*,
Masatoshi Konno, Mari Suzuki, Naoto Sugeno, Nobuhiro Fujikake, Sven Geisler,
Mitsuaki Tabuchi, Ryuji Oshima, Akio Kikuchi, Toru Baba, Keiji Wada, Yoshitaka
Nagai, Atsushi Takeda, Masashi Aoki (*corresponding author)
Neurobiology of Disease, [Epub ahead of
print]
近年、家族性パーキンソン病(PD)PARK17の原因遺伝子が細胞内小胞輸送機能に関連するレトロマー構成因子VPS35と同定されました。レトロマーはエンドソームからトランスゴルジ網への蛋白の逆行性輸送を担っており、その代表的な積荷蛋白としてマンノース6リン酸受容体(MPR)が知られています。MPRはリソソームのアスパラギン酸プロテアーゼであるカテプシンD(CTSD)の細胞内輸送・成熟に必須の分子であることから、我々はVPS35異常によるレトロマー機能障害がCTSD成熟過程に影響し、リソソーム内におけるα-シヌクレイン代謝に及ぼす影響について培養細胞およびVPS35 RNAiショウジョウバエモデルを用いた表現系解析を行い、以下の事実を明らかにしました。
(1) VPS35欠失細胞ではレトロマー障害を示すMPRの発現低下・細胞質全体への異常拡散がみられた。
(2) VPS35 欠失によりリソソームにおける活性型CTSD発現が低下すると共に、初期エンドソーム内および細胞外におけるCTSD前駆体増加が確認された。
(3) VPS35欠失によりリソソームにおいてα-シヌクレインの分解抑制・蓄積が観察された。
(4) VPS35 RNAiハエとヒト野生型αSYNトランスジェニックハエの交配により、ハエ脳内における界面活性剤不溶性α-シヌクレインが蓄積し、複眼変性および加齢に伴う運動機能低下が確認された。
以上の結果より、VPS35遺伝子異常によるレトロマー障害は、CTSDの成熟障害を介しリソソームにおけるα-シヌクレインの病的代謝・神経変性過程に影響を及ぼし、神経変性過程に関与している可能性が示唆されました(graphical abstract参照)。
本研究は国立精神・神経医療研究センター神経研究所 永井義隆博士らとの共同研究によるものです。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0969996114002150
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25107340
Graphical abstract.tif
(Graphical abstract.tif) |
←新しい記事へ | ↑一覧へ | 以前の記事へ→ |