研究トピックス
髄液CXCL13は無菌性髄膜炎の予後の予測に有用なマーカーとなりうる
2014/06/06
東北薬科大学病院の藤盛寿一先生との共同研究で、無菌性髄膜炎患者の予後因子としての髄液CXCL13濃度の有用性を示した論文がJournal of Neuroimmunology誌に掲載されます。市中病院の診療部長として非常に忙しい日常の合間にまとめられたことに頭が下がります。
無菌性髄膜炎は、予後良好な疾患である。しかし、病初期に無菌性髄膜炎と診断された症例が、経過中に意識障害や中枢神経巣症状を呈することを稀ながら経験する。無菌性髄膜炎症状を呈した症例が、無菌性髄膜炎のまま経過するのか、髄膜脳炎に移行するのかを病初期に鑑別することは早期診断治療において重要であるが、現時点では鑑別のためのマーカーが存在しない。
無菌性髄膜炎発症後に、意識障害、中枢神経巣症状などを呈した無菌性髄膜脳炎5例、無菌性髄膜炎8例、コントロール8例の3群を対象とし、ステロイド治療前検体を用い、Cytokine/chemokine multiplex assayにより髄液中のIL-1β、 IL-2、 IL-4、 IL-5、 IL-6、 IL-8、 IL-10、 IL-12 (p40)、 IL-13、 IL-17A、 IFN-γ、 CXCL13の濃度を測定した。
12種類のサイトカイン/ケモカインの中で髄液CXCL13濃度のみが、髄膜炎群に比較して髄膜脳炎群で、有意に増加していた(p=0.023)。BBBの障害を、Qalbを用いて評価したところ、髄膜脳炎群の測定例全例および髄膜炎群の5例中2例において障害が示唆された。
髄液CXCL13濃度を無菌性髄膜炎症状の発症時に測定することで、無菌性髄膜脳炎の早期診断治療が可能になりうると思われた。無菌性髄膜炎症状を呈する症例の中には、BBBの破綻に加えて髄液CXCL13の増加をきたし、脳実質内に炎症性変化が波及することで、髄膜脳炎に至る症例が存在する可能性が示唆された。
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