研究トピックス
PNPLA2の新規変異により、中性脂肪蓄積ミオパチーと中性脂肪蓄積心筋血管症をきたした1例
2014/05/25
Kaneko K, Kuroda H, Izumi R, Tateyama M, Kato M, Sugimura K, Sakata Y, Ikeda Y, Hirano KI, Aoki M.
A novel mutation in PNPLA2 causes neutral lipid storage disease with myopathy and triglyceride deposit cardiomyovasculopathy: A case report and literature review.
Neuromuscul Disord. Article in press
【概要】
Patatin-like phospholipase domain-containing 2 (PNPLA2)は細胞内脂質代謝に関連する遺伝子であり,変異により神経内科領域では中性脂肪蓄積ミオパチー(Neutral lipid storage disease with myopathy;NLSDM),循環器領域では中性脂肪蓄積心筋血管症(triglyceride deposit cardiomyovasculopathy;TGCV)を引き起こすことが知られている.我々は今回,著明な左右差を伴う骨格筋ミオパチーおよび心筋血管症を呈したNLSDM/TGCVの59才男性例を報告した.本例では上記の臨床所見にくわえて,好中球細胞質および骨格筋・心筋において細胞内に中性脂肪の蓄積した空胞を多数認めた.また,遺伝子検査でPNPLA2の新規遺伝子変異(c.576delC)を認めた.
さらに我々は,NLSDM/TGCV既報告例のうち,PNPLA2遺伝子変異が確認されている37例の臨床・遺伝学的特徴をまとめた.発症年齢の平均は30才,罹患頻度の高い筋は下肢背側(75%),上肢帯筋(50%),傍脊柱筋(33%)であった.11例でミオパチーに左右差を認めたが,そのうち10例は右優位であった.利き腕や抗重力筋など,使用頻度の高い部位での筋力低下が目立ち,病態との関連が示唆された.また,頻度の高い併存疾患は,心筋症(44%), 脂質異常症(23%), 糖尿病(24%), そして膵炎(14%)であった.PNPLA2 遺伝子変異はExon 4-7に集中していたが,変異部位と臨床型に明らかな関連は認めなかった.NLSDM/TGCVは稀な疾患であるが,近年新たな治療介入の報告例も散見されており,早期診断のためにはその臨床像の特徴を熟知しておく必要があると考えられた.
(文責:金子仁彦)
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