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研究トピックス

FUS/TLS変異を伴う家族性筋萎縮性側索硬化症の遺伝型-表現型の特徴

2016/02/01

 

Genotype-phenotype relationships in familial ALS with FUS/TLS mutations in Japan.

Akiyama T, Warita H, Kato M, Nishiyama A, Izumi R, Ikeda C, Kamada M, Suzuki N, Aoki M.

Muscle Nerve. 2016 Jan 28. doi: 10.1002/mus.25061. [Epub ahead of print]


筋萎縮性側索硬化症(ALS)は主に中年以降に発症し, 運動ニューロン優位の変性が生じることで筋萎縮・筋力低下を来す原因不明の疾患である。約5–10%が家族性である(FALS)ことが知られている。私たちは常染色体優性遺伝形式を有する111のFALS家系を集積し, copper/zinc superoxide dismutase 1 (SOD1) 遺伝子変異を31家系に見出した。残りの80家系に関し, fused in sarcoma/translated in liposarcoma (FUS/TLS), chromosome 9 open reading frame 72, profilin 1, (TAR)-DNA-binding protein, valosin-containing protein遺伝子変異の有無を検索した。その結果、12家系 (10.8%)より9種のFUS/TLS変異を見出し、日本人FALS家系において2番目に多い原因遺伝子であることを見出した。FUS/TLS変異を伴う症例 (FUS/TLS-FALS)27名の平均発症年齢は37歳、罹病期間は28.5ヶ月であり、球麻痺や頸筋、上肢近位筋からの発症を多く認めた。1例でfrontotemporal dementia (FTD)の合併を認めた。他の遺伝子変異によるFALS群と比較し、FUS/TLS-FALSは“早期発症”・“速い進行”・“脳幹/上位頸髄領域の発症”という特徴を認め、日本人FALS家系や、上記の特徴をもつFALS家系においてはFUS/TLS遺伝子の検索が重要であると考えられた。一方、p.S513P変異は高齢発症と下肢初発、そしてフレームシフト変異は他人種の既報と同様に若年発症と学習障害合併という特徴的な表現型と関連しており、FUS/TLSの遺伝子型がALSの表現型・病態形成に関与していると想定される(文責 秋山)。

 

 

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