Tetsuya Akaishi, Ichiro Nakashima,
Tatsuro Misu, Kazuo Fujihara, Masashi Aoki
Depressive State and Chronic Fatigue in
Multiple Sclerosis and Neuromyelitis Optica
J Neuroimmunol 2015; 283: 70-73
http://www.jni-journal.com/article/S0165-5728(15)00119-8/abstract
多発性硬化症(MS)では、うつ症状や疲労感を伴いやすいことが知られていますが、視神経脊髄炎(NMO)ではまだ検討されたことはありません。また、MSにおける疲労と血清カルニチン濃度の低下の関連を指摘する報告が過去にありますが、NMOを含め、カルニチン製剤による疲労改善効果は明確になっていません。今回我々は、当科通院中のMS患者75名とNMO患者39名において、うつ重症度スコアと疲労度スコアを、血清カルニチン濃度とともに測定しました。また、血清カルニチン濃度が低値であった患者のうち11名において経口カルニチン製剤を投与し、1か月後に両スコアを再検しました。MS、NMOとも半数以上で両スコアは異常高値となり、両疾患とも同程度のうつ・疲労症状を呈していました。血清カルニチン濃度はMS、NMOとも20%程度の患者で低値でしたが、その濃度とうつ・疲労症状の間に相関は認められませんでした。MS、NMOともうつスコアと疲労スコアの間に強い相関(R
≧ 0.70)を認め、両症状の背景に共通の病態が示唆されました。カルニチン製剤を投与された11名で1か月後に再検された両スコアは有意な改善を示しませんでした。今回の研究から、MS、NMOとも同程度にうつ・疲労を呈していることが明らかになったものの、それらの改善には、カルニチン製剤投与以外からのアプローチが必要と考えられました。