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研究トピックス

ジストロフィン複合体から局在移行したnNOSが産生するNOにより尾部懸垂での筋萎縮が引き起こされる

2008/03/20

 

○鈴木 直輝  (Suzuki N, Motohashi N, Uezumi A, Fukada S, Yoshimura T, Itoyama Y, Aoki M, Miyagoe-Suzuki Y, Takeda S. J. Clin. Invest. 117; 2468-76, 2007.)

 社会の高齢化に伴い、寝たきりや脳卒中罹患後の筋萎縮への対策が重要度を増している。近年、筋萎縮においてユビキチン・プロテアソーム系を介した蛋白分解経路の活性化が起こることが明らかになったが、筋萎縮の分子機構の詳細、特に筋細胞膜の機械的安定性の維持や細胞内情報伝達に非常に重要な分子であるジストロフィンを中心とした蛋白複合体の筋萎縮への関与は明らかではなかった。我々は不動による筋萎縮モデルの一つである尾部懸垂モデルを用いて、筋萎縮の分子機構を検討した。
 筋萎縮の過程でジストロフィン複合体の一員として筋細胞膜に局在し細胞内情報伝達に重要な役割を担う神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)が、細胞質に局在を移すことを見出した(図1)。さらに電子常磁性共鳴測定器(EPR spectrometer)を用いて、萎縮筋における一酸化窒素(NO)合成量が増加していることをex vivoで直接示した。NOは転写因子Foxo3aの活性化を介してユビキチンligaseであるMuRF-1やatrogin-1の発現増加を引き起こしていた。nNOS阻害剤によって筋萎縮は軽減した。(図2)これらの結果からnNOS由来のNOが尾部懸垂モデルにおける筋萎縮促進分子として働いていることが明らかとなった(図3)。
 nNOS/NOやそれらと相互作用する分子は筋萎縮対策の新たなターゲットの候補となる可能性がある。今後はALSなどの筋萎縮をきたす神経変性疾患で同様の機構が働いているかを解析し、治療応用が可能かどうか検討していく。

 

 

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