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研究トピックス

SCF型ユビキチンリガーゼによるC21ORF2のユビキチン化の異常はALS病態と関連する

2021/01/22

 

An Amyotrophic Lateral Sclerosis-Associated Mutant of C21ORF2 Is Stabilized by NEK1-Mediated Hyperphosphorylation and the Inability to Bind FBXO3.
Yasuaki Watanabe, Tadashi Nakagawa, Tetsuya Akiyama, Makiko Nakagawa, Naoki Suzuki, Hitoshi Warita, Masashi Aoki, Keiko Nakayama
iScience. 2020;23:101491.

要旨:
ユビキチン・プロテアソーム系は細胞内のタンパク質恒常性を保つことで神経細胞の機能維持に必須の役割を果たしており、代表的なユビキチンリガーゼであるSKP1-CUL1-F-box (SCF) 複合体は近年、パーキンソン病やポリグルタミン病といった神経変性疾患の病態形成に関わるという報告が相次いでいます。また、C21ORF2およびNEK1遺伝子は、2016年に筋萎縮性側索硬化症(ALS)の関連遺伝子であると報告されています。両遺伝子は細胞のセンサーとして機能する繊毛の機能不全を特徴とする疾患群でともに変異が報告されており、同一のシグナル経路で働いている可能性があったことから、これらの遺伝子産物であるタンパク質間の機能的関係と、ALS病態へ関わる分子メカニズムの研究を行い、下記のことを示しました。

1. C21ORF2はFBXO3を基質受容体タンパク質とするユビキチンリガーゼであるSCFFBXO3複合体によってユビキチン化され、プロテアソームによって分解されます。
2. C21ORF2のALS関連V58L変異体は細胞内でFBXO3に結合せずSCFFBXO3複合体によってユビキチン化されないため、野生型と比較してより安定化しています。
3. NEK1はC21ORF2をリン酸化するリン酸化酵素として働きますが、C21ORF2の野生型よりもV58L変異体を強くリン酸化します。
4. NEK1がC21ORF2をリン酸化すると、C21ORF2はFBXO3と結合能を失い、ユビキチン化が阻害されることで安定化します。
5. C21ORF2には逆にNEK1を安定化する作用があるため、FBXO3が失われるとC21ORF2とNEK1の両方が蓄積します。
6. C21orf2のV58L変異を有するマウス運動ニューロンは、神経突起の伸長不全を特徴とする異常な表現型を示します。

 これらの知見から、C21ORF2のALS関連変異はC21ORF2とNEK1の両方の蓄積につながる悪循環を引き起こし、運動神経細胞において病的な影響を及ぼす可能性が考えられます。

文責 渡辺 靖章

 

 
Graphical abstract (20210122_渡辺_graphical abstract.jpg)

 

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