研究トピックス
封入体筋炎の患者数は日本で増加している
2011/08/02
Increase in number of sporadic inclusion body myositis (sIBM) in Japan (J Neurol 2011)
鈴木直輝(Naoki Suzuki, Masashi Aoki, Madoka Mori-Yoshimura, Yukiko K. Hayashi, Ikuya Nonaka, Ichizo Nishino)
封入体筋炎(Sporadic Inclusion Body Myositis: 以下sIBM)は骨格筋に縁取り空胞と呼ばれる特徴的な組織変化を生じ炎症細胞浸潤を伴う難治性・進行性筋疾患であり、時に筋萎縮性側索硬化症(ALS)と鑑別困難な場合もある難病である。東北大学神経内科では厚生労働省の難治性疾患克服研究事業の封入体筋炎研究班の活動を通じて日本語での診断基準などを検討してきた(表)。欧米では高齢者の筋疾患の中で最多とされるが、これまで日本での有病率や臨床的特徴は検討されたことがなかった。今回は国立精神・神経医療研究センターの筋病理診断症例の中の多発筋炎(PM)の症例数と比較しsIBMの有病率を推定した。1990年からの9年間ではsIBMとPMは各8例と151例、1999年からの9年間では各69例と165例であった。PMの特定疾患受給者数が約3,000人と一定であることから、sIBMの日本での有病率は2000年代で100万人当り9.83人と推定された。1990年代の推定1.28人と比較して増加していた。この推定方法には診断難度が高い症例が集まってきているNCNPの患者背景、日本社会の高齢化、sIBMの疾患認知度の向上などの影響があるものの、昭和初期生まれの年代以降は増加が顕著なことから、生活様式の欧米化なども関わっていると考えられる。
110724 表 HP用 封入体筋炎 診断基準.pdf
(110724 表 HP用 封入体筋炎 診断基準.pdf) |
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