研究トピックス
MS、NMOの視神経炎における健側眼の不顕性網膜萎縮
2017/10/07
Subclinical retinal atrophy in the unaffected fellow eyes of multiple sclerosis and neuromyelitis optica.
Journal of Neuroimmunology 2017
Tetsuya Akaishi, Kimihiko Kaneko, Noriko Himori, Takayuki Takeshita, Toshiyuki Takahashi, Toru Nakazawa, Masashi Aoki, Ichiro Nakashima
多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)における視神経炎では、病側眼において不可逆性の網膜萎縮が進行することが知られています。しかし明らかな視神経炎のエピソードがない健側眼においても網膜萎縮が進行するかどうか、これまで検証されてきませんでした。
今回私たちは、2017年までに視神経炎が片側だけに発症したMS症例(22名)、抗AQP4抗体陽性のNMO症例(26名)、抗MOG抗体陽性症例(16名)、特発性視神経炎症例(18名)において、健側眼における網膜厚を光干渉断層計(OCT)で測定された経時データを用いて比較しました。
慢性期における健側眼の網膜厚は、罹病年数や年齢によらず、MS群とNMO群では大半の症例で萎縮が認められましたが、抗MOG抗体陽性群と特発性視神経炎ではごく一部の症例にしか萎縮は認められませんでした。NMO群において各人の経時的な網膜厚の推移をフォローすると、半数以上の症例で、視神経炎発症から最初の数年で健側眼においても急速に網膜萎縮が進行していました。そしてその萎縮の程度は、血清中の抗AQP4抗体価と弱く相関関係を認めました。
これまでNMOでは神経障害度の進行は臨床的再発に際してのみ進行すると考えられてきましたが、今回の研究から、MSと同様に潜在性の神経変性プロセスが存在することが示され、その進行に抗AQP4抗体の関与が示唆されました。(文責:赤石 哲也)
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