研究トピックス
日本人の多発性硬化症における全脳容積と灰白質容積の検証
2017/03/23
Whole brain and grey matter volume of Japanese patients with multiple sclerosis.
Tetsuya Akaishi, Ichiro Nakashima, Shunji Mugikura, Masashi Aoki, Kazuo Fujihara
Journal of neuroimmunology; 306: 68-75
【背景】
多発性硬化症(multiple sclerosis: MS)では,繰り返す再発に加えて,脳の萎縮が潜在性に進行している可能性が示唆されており,治療介入の必要性が注目されています.しかしこれまで,日本人のMSの患者さんにおいて脳容積を評価した研究はありませんでした.
【方法】
当院外来に通院中の85名のMSの患者さんにご協力いただき,Icometrix社のMSmetrixを用いて,全脳容積,灰白質容積,白質容積,病巣容積を網羅的に測定しました.このデータを,Icometrix社から提供された1,282名の健常者データと比較しました.
【結果】
日本人のMS患者さんにおいても,健常者と比べると,病初期から脳萎縮の傾向があること,および脳萎縮は進行型の病型(一次進行型MS,二次進行型MS)でより顕著であることが示唆されました.一方で脳萎縮の速度は,欧米人のMS患者さんに比べると軽いことが示唆されました.MS患者さんの障害度スコア(EDSS)と灰白質容積の間には有意な相関を認めましたが,EDSSは年齢や罹病年数とも有意な相関を示しました.
【結論】
日本人のMS患者さんでは欧米の患者さんに比べて脳萎縮が軽い傾向が示唆されましたが,病初期からの脳萎縮は存在すると考えられ,今後そのような脳萎縮の進行を抑えることができる治療法の開発・導入が待たれます.
(文責:赤石 哲也)
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