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研究トピックス

けいれんを伴う抗MOG抗体陽性の良性、片側性、大脳皮質性脳炎

2017/01/23

 

けいれんを伴う抗MOG抗体陽性の良性、片側性、大脳皮質性脳炎

MOG-antibody-positive, benign, unilateral, cerebral cortical encephalitis with epilepsy

Ryo Ogawa, Ichiro Nakashima, Toshiyuki Takahashi, Kimihiko Kaneko, Tetsuya Akaishi, Yoshiki Takai, Douglas Kazutoshi Sato, Shuhei Nishiyama, Tatsuro Misu, Hiroshi Kuroda, Masashi Aoki, Kazuo Fujihara.

Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2017 Jan 16;4(2):e322.
doi: 10.1212/NXI.0000000000000322.

【背景】 ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG)は髄鞘の外表面に存在する中枢神経系に特異的な抗原蛋白である。近年抗MOG抗体がNMOSDなど様々な中枢性脱髄疾患で検出されることが報告されている。しかし抗MOG抗体がどのくらい幅広い中枢性脱髄疾患で検出され、さらに疾患バイオマーカーになり得るかは不明である。我々は視神経炎を発症後に全身強直性けいれん、精神症状を呈し、MRI画像で片側性かつ皮質性脳炎を認めた抗MOG抗体陽性患者を経験した。
【目的】 上記症例を含め原因不明の脳炎成人患者における抗MOG抗体の陽性頻度と陽性患者の特徴を明らかにする。
【方法】 2008年から2014年の間に当院に入院した原因不明の成人脳炎患者連続24人の保存血清におけるIgG1型の抗MOG抗体の有無をcell based assay法を用いて調べた。さらに抗MOG抗体が陽性であった患者の臨床的、放射線的、検査所見の特徴を後方視的に分析した。
【結果】 4例で抗MOG抗体が陽性であった。全て男性であり全身強直性けいれんを認めた。3例で精神症状、2例で視神経炎を認めた。全例頭部MRI画像で片側性かつ皮質にFLAIRで高信号域を認めた。脊髄病変を認めた症例はいなかった。脳脊髄液検査では単核球優位の細胞増多並びに軽度の蛋白上昇を認めた。しかしミエリン塩基性蛋白は正常でありオリゴクローナルバンドも検出されなかった。他の自己免疫性脳炎関連の自己抗体はすべて陰性であった。全例ステロイド治療が奏功した。
【結論】 ステロイド反応性が良好である特徴的な臨床症状を呈する脳炎患者で抗MOG抗体を同定した。抗MOG抗体がどのような機序で病態に関与しているかは不明だが、良性の経過をたどる自己免疫性脳炎の特異的なマーカーである可能性がある。またこれまで報告されてきた抗MOG抗体関連疾患とは異なる臨床型であり、より幅広い疾患スペクトラムを考える必要があるかもしれない。(文責:小川 諒)

 

 

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