研究トピックス
誤配送にご用心:神経変性疾患におけるレトロマーの多面的役割
2022/05/25
Beware of Misdelivery: Multifaceted Role of Retromer Transport in Neurodegenerative Diseases
Shun Yoshida, Takafumi Hasegawa*
(*corresponding author)
Front. Aging. Neurosci., Vol.14, 897688, 2022
要旨:
レトロマーは、エンドソームからの逆行性荷物の仕分けを仲介する高度に統合されたタンパク質複合体である。レトロマーは付属タンパクと協同して積荷分子を管状・小胞状構造体へ駆動し、トランスゴルジ網または細胞膜へと移送する作用を有する。また、エンドソーム輸送に加え、ミトコンドリア動態やオートファジー過程にも関与し、細胞の恒常性維持に寄与している。レトロマーとその関連分子は神経細胞やグリア細胞をはじめ多種類の細胞に発現しており、遺伝学的・生化学的研究から、同機構の機能不全がアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患の発症に深く関与していることも示唆されている。さらに、レトロマー構成分子を標的とする薬剤により神経細胞死を緩和出来る可能性が示されており、レトロマー複合体は神経変性疾患の治療標的としても有望視されている。本レビューでは、レトロマー制御機構に関する最新の知見を提供すると共に、その機能不全が神経変性の病態プロセス及ぼす影響について議論したい。
文責 吉田隼、長谷川隆文
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