研究トピックス
多発性硬化症と視神経脊髄炎における機能障害の進行パターン
2020/08/21
Progressive patterns of neurological disability in multiple sclerosis and neuromyelitis optica spectrum disorders
Tetsuya Akaishi, Toshiyuki Takahashi, Tatsuro Misu, Michiaki Abe, Tadashi Ishii, Juichi Fujimori, Masashi Aoki, Kazuo Fujihara & Ichiro Nakashima
Sci Rep 10, 13890, 2020
要旨:多発性硬化症(MS)と視神経脊髄炎(NMOSD)はともに再発性の中枢神経病変を特徴とする原因不明の神経疾患です。MSでは再発時の増悪だけでなく、再発がなくとも障害が進行しうると考えられています。一方、NMOSDでは再発のたびに段階的に神経障害が蓄積すると考えられています。今回わたしたちはこれらの知見を実際のデータで裏付けることを目標としました。当院に通院歴のあるMSとNMOSDの患者さんの機能障害をEDSSスコアを用いて毎年フォローした結果、やはりNMOSDではMSと比較して無再発時における神経障害度の変化は有意に少なく、NMOSDの神経障害は専ら再発時に段階的に蓄積してゆくことが裏付けられました。一方、適切な疾患修飾治療(DMT)を受けているMSでは無再発時の増悪はNMOSDと比べて有意に多いということはなく、むしろ無再発時における神経障害度の改善がしばしば観察されました。特にそのようなMSにおける障害度の改善は、脊髄に責任病巣が存在する症例に多くみられました。NMOSDにおける機能障害が総じて不可逆的であるのに対し、MSにおける機能障害には一定の可逆性があることが示唆されました。
文責 赤石 哲也
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