研究トピックス
MSのオリゴクローナルバンドおよび脳室周囲病変は、病勢およびBBB透過性に影響しない
2018/02/08
MSのオリゴクローナルバンドおよび脳室周囲病変は、病勢およびBBB透過性に影響しない
Oligoclonal Bands and Periventricular Lesions in Multiple Sclerosis will not increase Blood-Brain Barrier Permeability
Tetsuya Akaishi, Toshiyuki Takahashi, Ichiro Nakashima Journal of Neurological Science 2018
http://www.jns-journal.com/article/S0022-510X(18)30078-9/pdf
多発性硬化症(MS)において、髄液オリゴクローナルバンド(OB)や複数の脳室周囲病変(PVLs)は典型的な所見として広く知られているが、必ずしも全例に見られる所見ではなく、それらの病態的意義は未だ不明な点が多い。
今回われわれは、MS症例における患者背景、MRIデータ、血清・髄液ペアデータなどを網羅的に集計し、OB陽性例と陰性例、および≧3 PVLs症例と<3 PVLs症例でグループ分けし、OBおよび≧3 PVLsを有する症例がどのような病態スペクトラムを有するのか、あらためて検証した。
既報の通り、OBの有無とPVLsの個数は相関を示したが、いずれも重症度や病勢、臨床経過などとは関連していなかった。また予想に反して、OBや≧3 PVLsを有する症例では、血液脳関門(BBB)透過性のマーカーとされるQ albが低い傾向を示し、年齢を調整した疾患コントロール群と比べても決して高くはなかった。OB陽性例ではIgG-indexは高い傾向を示したが、それはQ IgGの増加に伴うものではなく、主にQ albの低下に伴うものであった。実際、IgG-indexが特に高い症例群では、Q albも著明に低かった。
今回の研究ではOBおよびPVLsの有する病態的意義の解明には至らなかったが、それらの存在が重症化やBBB透過性亢進に寄与しないことが示唆された。OBやPVLsは以前の病勢をある程度は反映しうるが、現在の病勢を鋭敏に反映もしくは修飾する因子ではないと考えられる。(文責:赤石 哲也)
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